不動産の話

不動産屋ですが不動産投資より株式投資をお勧めします

皆さんこんにちは。不動産屋のミナンチャです。

皆さん投資といえば思いつくものは何でしょうか?株・不動産・金・先物・FX・暗号資産といった感じでしょうか。これらの中で日本人に最もメジャーで人気があるツートップは株と不動産じゃないでしょうか。FXや暗号資産なんかはちょっと投資というより投機に近いのかなと思います。

僕は不動産屋として、区分所有物件から一棟収益物件、底地や立体交換案件まで数多くの収益物件の売買・有効活用・コンサルティングを取り扱ってきました。当然に一般人よりは遥かに経験と豊富な情報がある立場にいます。

ですが、そんな僕は投資に関して不動産も株も詳しくないという友人や知人にアドバイスを求められたときには、不動産投資でなく株式投資をお勧めしています。(仕事上では当然不動産投資を勧めます。笑)

今回はなんで不動産屋なのに不動産投資でなく株式投資を勧めるのかについて不動産屋の目線からお話したいと思います。

この記事の信頼性

この記事はこんな人が書いています。

  • 業界大手の財閥系不動産売買仲介会社で17年間に亘って仲介業務を経験
  • 現在まで300組以上の売買仲介案件を成約
  • 1級ファイナンシャルプランナー
  • CFP認定者
  • 宅地建物取引士

不動産投資をお勧めしない理由

まずは結論から申し上げます。不動産屋の僕が不動産投資をお勧めしない理由は下記のとおりです。予めお断りしておきますが、あくまで株式投資と比較した場合において、という前提であり、不動産投資を全面否定するものではありません。その点については予めご理解ください。

また、理由について順番にご説明した後に、「それでも不動産投資がやりたい」という人に向けて、不動産投資の良い点ともし不動産投資するなら気を付けるべき点についてもお話します。

各項目について順にご説明していきます。

不動産投資は投資でなく事業。かなり面倒

不動産投資にはかなりの気合と労力が必要となります。株式投資との比較においてはこの点が最も負担が大きい点かと思います。物件選定から銀行との融資交渉、売主との折衝まで自分でやる必要があります。もちろん不動産屋が最大限のサポートはするのですが、最終的に判断や決断をするのは買主です。

一般的な収益不動産取得・運営までの必要なポイントは下記のとおりです。なお、不動産屋が概ねサポートする項目も含みます。

【物件を取得するまで】

  1. 物件情報の収集(ネット検索・不動産屋回り)
  2. 物件の現地確認・選定
  3. 建築規制や賃貸内容等の物件内容の確認
  4. 金融機関への融資相談・審査手続き
  5. 買付申込み
  6. 売主との条件交渉
  7. 手付金準備
  8. 売買契約締結
  9. 取得後の管理会社・保険会社の選定
  10. 融資実行に向けた手続き
  11. 残金決済と所有権移転

【物件取得後】

※以下は管理会社へ委託する場合、実務面は全て管理会社が担う場合が殆どですが、管理会社からの確認や相談について都度判断するのは貸主となります。

  1. 賃借人退去時の修繕について管理会社と協議
  2. 設備等の劣化による修繕やメンテナンス対応
  3. 入居者との賃料等の条件交渉
  4. 契約更新に関する諸手続き
  5. 入居者との紛争・トラブルの対応
  6. その他管理会社との日々のやり取り

これ結構面倒くさくないですか?不動産屋の僕からみても相当疲れます。

株ならスマホでポチですが、不動産はそうはいきません。やはり「不動産が好き」っていう人でないと負担は大きいはずです。

素人が優良物件情報を入手するのは至難の業

僕たちプロでも日々凄まじい情報戦の中で物件情報を獲得しています。現代はインターネットが発達しているとはいえ、やはり日本の不動産業界はまだまだ古い業界で、未だに横のつながりによってアナログに情報をやり取りしています。一般個人が買うような物件と不動産デベロッパーが買うような物件が決して交わらないのもそれが大きな理由の一つです。

また、仮にネット情報などを掴んだとしても、そういったオープン情報で魅力的な物件は相当熾烈な争奪戦になります。問い合わせや情報収集などのスピードが必要なことはもちろんのこと、引き合いが多いため価格を含めてた条件は買主にとってかなり厳しい場合が殆どです。

1時間の差で他の人が申込してしまったとか、融資相談をしている間に現金で支払い可能な客に持っていかれてしまった、なんていうのはザラです。通常の商慣習では買い取る側が有利なイメージがありますが、不動産に関しては条件交渉や優位性おいては圧倒的に売主が有利です。業界では「物(ブツ)を制するものが市場を制す」なんて言われることもあるくらいです。

株式市場の上場銘柄は価格が高いとかの理由を除いて、「買えない」という状況はありません。この点も不動産とは大きく異なります。

実質利回りは結構低い

ネットや物件図面に記載している利回りはいわゆる「表面利回り」です。年間収入を物件価格で割り算した単純な利回りのことですね。実際に手取りとなる金額で計算した利回りは「実質利回り」といい、賃料収入からあらゆる経費を差し引いて考えます。

具体的にはこんな費用がかかります。

【購入時】

  • 仲介手数料
  • 融資に係る諸経費(融資利用の場合)
  • 所有権移転登記、抵当権設定登記費用
  • 印紙代、など

【所有中】

  • 管理委託手数料(管理会社へ委託する場合)
  • ローン返済(融資利用の場合)
  • 退去時の修繕費用
  • 経年による定期メンテナンス費用
  • 固定資産税、など

費用の大きさのイメージですが、ざっくり、購入時の経費は売買代金の約5~8%、所有中の経費は収入賃料の6~8%(ローン返済額は除く)くらいかと思います。一番重たいのがローン返済額だと思いますが、借入条件によって全く異なるのでここでは触れません。

不動産価格が高騰している昨今、表面利回り4~5%くらいの物件を目一杯の借入をして購入した場合、なかなか黒字で運営するは難しいのが現実です。

一方で株式投資にかかる経費は購入時の僅かな手数料と信託報酬、税金くらいですから、不動産に比べると圧倒的に手軽ですね。

高利回り物件は銀行が融資できな場合が多い

では高利回りな物件を買えばいいじゃないかという発想になりますが、これにも問題があります。

高利回りな物件というのは、問題があるから価格が安くて利回りが高いのです。そういう値付けをっしないと売れないからです。

具体的な例として

  • 築年数が著しく古い
  • 違反建築
  • 物件に重大な瑕疵(欠陥)がある

経験上こんなケースが多いです。これらの何が問題かというと、融資を利用しようとしても銀行が融資してくれないことです。現金で買うなら問題ありませんが、その場合でも、いざ将来売却しようとした際に同様の問題を抱えながら売却するため、買い手を見つけるのが非常に困難で価格も相当に安くなります。

不動産屋は必ずリセールバリューを見ます。買って終わりではありません。転売時にどのくらいの損で済むのか、または儲かるのかという視点で物件を選定します。この考えは一般の方にとっても非常に重要だと思います。

空率リスク・賃料下落・事故は侮れない

良く見落としがちなのが「空室リスク」です。収益不動産の賃料収入は賃借人がいて初めて成り立ちます。しかし賃借人は、いつの日か必ず退去する時が来ます。空いた部屋を募集してすぐに成約すればよいですが、そう一筋縄ではいかないのが不動産です。

都心の一等地であれば空室リスクは確かに低いのですが、そういう優良な賃貸物件は価格も高くて物件を入手すること自体が難しかったりします。また、退去した賃借人が部屋を汚していたり、設備故障やリフォームが必要な場合は、それらが完了するまでは新たな賃借人も入居できませんので、その間は賃料収入はありません。

必ず常に満室の前提で考えている人が良くいますが、そんな状態の方が不自然です。空室になるタイミングは必ずあるのです。これらは当然に利回りを圧迫します。

また、築年数を経るにつれて近隣では新しい賃貸物件や最新設備を導入した物件などが出現し、相対的に賃料は下落していきます。これも認識すべき点です。

最後に事故物件化です。漫画やテレビだけの話ではありません。結構ありますよ、事故物件。良く物件図面に「告知事項あり」って書いてあるやつです。室内で自殺などの事件事故があった場合、賃料も売値も相当に下がりますし、法律上隠して貸し出したり、売買することはできません。

またこれらの問題点は全て自身でコントロールできないものという点です。

実は売るのも大変

賃借人が居住したままの状態で古くなった収益物件を売るのは、普通の家を売るより遥かにハードルが高いです。

通常の古家付き土地であれば解体して容易に更地にできますので、買主はその後に土地を自由に活用できます。一方で賃借人居住中の物件は解体できませんので、現状のまま購入してくれる買主を見つけないといけません。建物が比較的新しくて銀行の融資が利用できる物件であれば買い手もつきますが、相当数の築年数が経過している物件は現金で購入できる買主を探さなくてはいけないのでそう容易にはいきません。

また、賃貸中の物件の価格評価は、一般住宅の様に周辺土地相場や建物評価から売値設定するのでなく、利回りがどの程度あるのかという基準で売値設定(収益還元法)します。その場合は一般的に住宅物件よりも安い売値設定となることが多いです。

なお、賃借人の退去は皆さんが想像されているよりずっと大変です。基本的に賃借人は法律(借地借家法)により守られているため、正当な事由なくして強制的に退去させることはできません。ただ「売りたいから退去してほしい」という理由は正当な事由になりません。退去について賃借人と協議が拗れる場合は、弁護士へ依頼したり、立退料を支払うなどの負担が生じる場合があります。

この点でも、株式は市場が開いている時間なら、自由にいつでも売却して換金することができるため、不動産よりも非常に流通性が高いと言えます。

それでも不動産投資がしたいという人へ

これまで不動産投資の困難な点ばかりをお話してしまいましたが、不動産投資にだって優れいている点はあります。株と比較して銀行融資を利用したレバレッジを利かせやすい点や値動きが少ない点です。株にも信用取引で証券会社から株や資金を借りてレバレッジを利かせた取引をすることは可能ですが、不動産よりも値動きが激しいのでリスキーです。良い意味で不動産はミドルリスク・ミドルリターンなのです。

それでも不動産投資がしたいという人はこれらのメリットに魅力を感じている人、あるいは「そもそも不動産が好きな人」かと思います。

これから不動産投資を検討される方に僭越ではありますが、不動産屋の僕から簡単なアドバイスをさせて頂きます。

地方物件は避ける。人気エリアしか買わない

我々がお客さんからの売却依頼で一番頭を悩ませるのが、売るに売れなくなった地方や郊外の物件です。個人の買い手はまず付けられないので、基本的にはプロの不動産業者の買取案件として対応します。当然にして購入した当時の価格からは相当に安い売却価格となります。

先にも述べましたが、不動産はリセールバリューが全てです。5年後、10年後も変わらぬ価値で売り抜けられるのか、という視点です。

地方・郊外の物件はいくら目先の利回りが良くても、出口がないので将来後悔します。

皆が欲しがる場所の物件しか買わないという基本姿勢が大切です。

資金計画を立ててから戦略と準備をもって挑戦する

不動産は株と比べて初期投資が大きいです。また、先述のように良い場所の物件を買うにはやはり資金力がものを言います。自己資金を貯めることはもちろんですが、事前に金融機関などへ相談して、自分の属性でどの程度の融資が金融機関から借りられるのかということも確認しておくことが重要です。

買付可能な予算が把握できれば、その中でベストなエリアを予め選定できます。

不動産だけは見切り発車の挑戦は絶対にだめです。必ず失敗します。そういう人を大勢見てきました。もちろん始めの一歩から勢いに任せて順調な道を歩む不動産投資家もいますが、正直なところ、そういう方々は時世やタイミングなどの運の要素が多分に影響しています。

その成功している不動産投資家の下には、沈んでいった無数の屍があることをお忘れなく。不動産投資の失敗は経済的に与えるダメージが大きいため、場合によっては再起不能となる場合があります。

まとめ

人気の不動産投資について、不動産屋目線での実務的な弱点を説明してきました。一方で不動産投資にも素晴らしい一面がありリスクを承知した上で、正しく準備をして進めれば成功の道も十分にあることもお話いたしました。決して不動産投資を全面否定する意図ではありません。

いずれの投資においてもそれぞれの特性を踏まえて正しいリスクを取ることが肝心です。

このお話が皆さまの投資方針の一助となれば幸いです。

ここまで読んで下さり、ありがとうございました。

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