皆さんこんにちは。ミナンチャです。
今回は不動産屋が売主さんから売却依頼を受けた際、実際にどんな売却活動をしているのかについてお話したいと思います。不動産屋って正体不明じゃないですか?得体が知れませんよね。
今回のお話は長年にわたり大手不動産会社で数々の強豪会社としのぎを削って成約の山を築いてきた僕から、現在売却依頼中の売主さんがより不動産屋を理解できるように、また、物件探し中の買主さんが新鮮な物件情報がどのタイミングでどこにあるのかが分かるようなっていただくものです。
本に書いてあることでなく「実務」を包み隠さずお話します。このお話がみなさんのお役に立てば幸いです。
では行ってみましょう!
不動産屋の売却活動
不動産屋の売却活動について、個人に売るのかプロ業者へ売るのかで多少変わってきます。それぞれに分けてご説明します。なお、個人向け売却については専任媒介で売却を受ける場合を想定しています。
この記事の信頼性
この記事はこんな人が書いています。
- 業界大手の財閥系不動産売買仲介会社で17年間に亘って仲介業務を経験
- 現在まで300組以上の売買仲介案件を成約
- 1級ファイナンシャルプランナー
- CFP認定者
- 宅地建物取引士
両手と片手について
説明に先立ち、まずは「両手」「片手」について触れておきます。
不動産会社が売主さんから売却依頼を受けて成約した場合、売主さんから売買代金の約3%の手数料をいただきます。その際に買主さんをその不動産会社自らが見つけてきて成約した場合、買主さんからも約3%の手数料をいただきます。売主さんからも買主さんからも両方から手数料をもらう、これを「両手」と呼びます。
一方で、買主さんを他の不動産会社が連れてきて成約した場合、売主さんからしか手数料をもらえません。買主の手数料はその買主を連れてきた他の不動産会社がもらうからです。これを「片手」と呼びます。
この「両手」「片手」の仕組みは不動産仲介の仕事の仕方に大きな影響を与えています。それはそうですよね。両手であれば同じ物件の取引をしていても、単純に片手取引の倍の手数料になるわけですから。これがミソとなります。
個人客向けの販売はまず両手狙い
個人客向けの販売とは、具体的に住宅や小規模な収益物件などの個人の顧客が買主となる物件の販売を指します。この場合、特段の理由がなければ基本は「両手」取引を狙うのが定石です。だって手数料は片手の倍ですから。
営業担当者自らの直客へ紹介
僕たちはまず自分が予め抱えている購入希望顧客に向けて物件を紹介します。「新規情報・未公開情報が入りました。公開までには時間はありませんが検討しませんか?」という具合ですね。目ぼしい顧客がいなかったり、食いつきが悪ければ、自分以外の営業部店内の営業担当者へ声を掛け、営業部店内でセールスしていきます。ここの時点で購入希望者が見つかればそこでセールス活動は終了です。
ネット反響・隣地セールス・マンション内セールス
営業部店内でのセールス活動と並行して、自社サイトのインターネット広告への掲載を行います。また、土地や戸建であれば隣接する隣地宅へ物件セールスを行い、マンションの場合は同マンション内の住人へダイレクトメールや物件チラシの投函をします。当然これらの販売活動は売主さんの了承を頂いたうえで実施します。
実は隣地とか同じマンション内の人って結構な高確率で買います。
隣地を買って息子家族を住まわせるだとか、お金がある方ですと「滅多にないチャンスなのでとりあえず買っておく」というお客さんもいます。地続きで隣地を手に入れることで、間口が広がったり、用途地域によっては高層の建物の建築が可能になったりし、資産価値が向上する場合があります。同じマンション内で購入される方は上層階を買って住み替え、もと住んでいた自分の部屋は賃貸に出して収益物件にするという方や、家族に住まわせるためという場合が多々あります。僕も隣地や同じマンションのお客さんに買って頂いたことは多々あります。
あと最近はネットが主流のため、だいぶ減りましたが新聞折込広告をしたりもします。これも同様に物件の近隣エリアに配布します。やはり住宅は地縁のあるかたが買う場合が殆どですので。
同業他社への紹介は最後
これらの営業活動を行って、それでも買主さんが見つからない場合は、「片手」を覚悟で他の不動産仲介会社へ情報を開示して買主さんを募ります。不動産業者間で物件情報を交換するインターネットサイト(レインズといいます)に登録して情報公開するのです。
ちなみに、これらの両手狙いの営業活動は売主さんから売却依頼を頂いた日から7営業日以内に行います。なぜなら、専任媒介契約の場合、契約締結日から7営業日以内に不動産業者間で情報公開しなくてはいけない(具体的には上記のレインズへ登録しなくてはならない)ルールとなっているからです。結構慌ただしいですよね。
買主が新鮮な情報を手にするにはどうすればよいか
また、以上を踏まえて買主さんはどのようにして新鮮な物件情報を手に入れればよいかにつても触れておきます。
ご説明のとおり、不動産仲介会社は両手に拘ります。これらを利用して、大手不動産会社の自社HPへ登録して新規物件情報の通知を受けることが有効だと思います。自社HPという点ですが、大手仲介会社の場合、SUUMOなどの不動産ポータルサイトへの掲載よりも自社HP掲載の方が早い場合が多いからです。また、大手仲介会社の場合、登録をすることで自社の新規情報を自動的にメール配信してくれたりするサービスを持っている場合が多いです。
良質な物件はスピードが命です。1日や2日の差で買い損ねることは多々あります。
また、もう少し本腰を入れて熱心に探されている場合は、多少労力はいりますが、自分の希望するエリアの不動産会社へいくつか相談しておくと良いと思います。明確に条件と予算を伝えて「買う気」を示しておけば、いざというときに情報が回ってくることがあります。ご説明したとおり、営業担当者が最も嬉しいのは自身の両手だからです。インターネット反響で別の営業マンがその反響を取ってしまうと、その買主さんと契約する場合は、自身と買主の反響を取った営業マンとで折半(片手づつ)になってしまうからです。この辺も営業マンにとっては重要なポイントです。
プロ業者向け販売は完全非公開
プロ業者への販売とは、土地の面積が大きいために総額が張ってしまい個人が買い切れない物件であるとか、物件に重大な瑕疵(欠陥)があって個人では処理しきれない物件などをプロの不動産業者が加工して転売することを目的に買い取ることを意味します。
このケースでは、個人向けの場合と異なり、入札で競合するなどの場合を除いて他社と競合するケースは少ないです。
まず、業者向けの販売の場合、そもそも売主さんとの間で媒介契約を結ばずに、情報を非公開にした状態のまま水面下で活動するケースが殆どです。先に説明のとおり、媒介契約(一般媒介を除く)を売主さんと締結すると7営業日以内に市場に情報公開しなくてはいけなくなります。
プロ向けの販売においては、情報の鮮度と秘匿性が買値を押し上げます。
市場で晒されて誰も買い手がつかない状態となった手垢のついた物件は買いたくないからです。業者向けの売り情報が表に出ない理由はここにあります。
売却依頼を受けた僕たちは、水面下でその物件に対して一番価格が伸びるであろう業者を複数選定して、価格を競わせて、最高金額を提示した業者の購入希望書面を売主さんへお持ちします。売主さんがこれに納得されて成約すれば、この取引も非公開のまま完結します。
まとめ
いかがでしたか。
不動産屋はこんな風にして、売主さんの売却物件を営業しています。「両手」「片手」はお前らの理屈だと言われると返す言葉もなのですが、これが昔から脈々と続く慣習であり実態です。誤解のないように申し上げますが、「片手」取引をしない、または故意に避けるということはありません。個人間売買の約7割が片手仲介です。
僕たちの仕事はみずからの収益を上げるとともに、売主さんからお預かりした大切な物件を速やかに適正価格で間違いのない買主へ売ることです。
以上、参考になれば嬉しいです。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!