不動産の話

不動産の共有名義はデメリットしかない!問題点と解決方法を不動産屋が解説

相続で共有名義となった、夫婦で共有名義でマイホームを購入した、などなど様々な理由で不動産を共有名義とする人たちがいます。しかし、原則、不動産の共有名義はお勧めしません。

共有名義の不動産は、単独で売却することができず、将来にわたって物件から生じる収益と費用を負担していかなくてはなりません。また、共有者の誰かに相続が発生するたびに共有者数は増えていきますし、放っておけば将来的に自身の子供が負担を背負うことになるからです。

今回の記事では不動産を共有名義とするリスクと最善の解決方法について解説します。

是非最後までご覧ください。

この記事で分かること

この記事の信頼性

ミナンチャ

この記事はこんな人が書いています。

  • 財閥系不動産会社で長年にわたり売買仲介を専任
  • 現在まで300組以上の売買仲介案件を成約
  • 宅地建物取引士
  • 1級ファイナンシャルプランナー
  • CFP認定者

共有名義の問題点

不動産を共有名義とすることにはいくつかの深刻な問題点があります。

今は顕在化していないことでも、その後大きな悩みの種になりえます。不動産の実務でも顧客から聞く売却理由で多いのが共有解消である点からもその深刻さが伺い知れます。

では具体的に何が問題になるのかを見ていきましょう。

単独では売却できない

一番の問題点は自身の意思だけでは、売ることも建て替えることもできないということです。売ったり建て替えたりするためには共有者全員の同意が必要となります。

つまり、共有者が10人いて9人が売りたいと思っていても、たった1人が反対すれば売れないということです。

また、不動産の売却には売主全員の意思能力が必要となります。高齢化が進み、認知機能を失ったり、そのほかの病気などにより不動産売却について承諾するだけの意思能力が損なわれた場合には、例え健全だった頃に全員が売却する意向であったとしても、同様に売ることはできません。

全員が意思能力を有し、全員が同意しないとただ現状のまま維持していくのみとなります。

人の心は移り気です。仲の良かった親戚や兄弟、夫婦でさえも上手くいかなくなることはあり得るし、その時に処分できない不動産を抱えながら背負う心的な負担は決して軽いものではないでしょう。

相続により更に共有者は増える

現在は2人、3人の共有であるかもしれませんが、誰かに相続が起きた場合には、その所有権は相続人に引き継がれます。もしかすると、その相続人はあなたと面識のない遠い親戚であるかもしれません。

ではそのまま放置しておけば問題は解決するのでしょうか。残念ながら逆です。問題はもっと大きく複雑になっていきます。

意思統一が可能な関係性のみで構成される共有者ならば問題ないでしょうが、このように相続を経るたびに、共有者が増えている状況においては、必ずしも新たな共有者があなたの意思を汲み取ってくれる人間ばかりとは限りません。

価値観や意向の異なる共有者をまとめ上げてひとつの方向性に導くことは容易ではありません。

収益・費用の負担が継続する

収益物件などの場合で安定的な収益が出ているうちは良いでしょう。しかし、経年劣化とともに家賃の下落や空室によって赤字経営に転落したり、大規模修繕が必要となり相当の費用負担が生じる場合には、継続的な費用または突発的で多大な費用を共有者間で負担することになります。

また、不動産の管理は誰かが主体となって行わないと進んでいかないものです。収益の配分においても、より大きな管理負担を背負っている共有者にとってみれば、取り分を多く貰いたいという考えが生じるのは当然です。これら配分の共有者間の調整や煩雑な物件のメンテナンスに関する意思決定に関与することは、心的負担を伴うでしょう。

解決を図らない限り、この状況はずっと続きます。

配偶者や子供にツケがまわる

やがて来るあなた自身の相続についても考えておく必要があるでしょう。あなたの代で解決しておかなければ、その代償はあなたの相続人が払うことになります。

あなたには交渉したり合理的解決を考える力があるかもしれませんが、残された相続人が同様に対応できるとは限りません。不利な条件を押し付けられたり、不合理な解決策を提案されるなどのリスクも考えられます。ですから、解決できるうちになるだけトラブルの種は取り除いておくべきでしょう。

解決策

現実的な解決策は以下3つです。それぞれの効果と注意点と合わせて解説します。

共有物分割

共有名義である土地を持ち分に応じて分割し、各々の単独所有の土地にする方法です。共有物分割と言い、言葉だけ聞くと難しそうですが、図で見ると簡単です。下記の要領ですね。

効果

  • 不動産の継続保有が可能
  • 各々単独で処分・活用が可能

注意点

  • 双方が納得できる条件で分割することは難易度が高い
  • 分割できるだけの面積規模が必要
  • 土地の確定測量が必要

この方法の良い点は、それぞれが完全個別の所有権として不動産を手にできるため、分割後の自由度が非常に高いことです。一方で、接道状況、方位、日当たり、地形など個別の条件により、同一面積で分割するとしても全くの等価で分割することは困難であることは知っておくべきでしょう。

また、そもそも分割できる大きさの土地であることが要件となりますし、土地を分割するには確定測量といって、前面道路も含む全ての隣接点、隣接線について隣地と境界確定をする必要があり、時間と費用がかかる点にも注意が必要です。

測量については過去に詳しく記事にしていますので下記を合わせてご覧下さい。

土地の売却になぜ測量が必要なのか? どうも皆さんこんにちは。 ミナンチャです。 土地や戸建を売却するとき、不動産屋から必ず「測量しましょう」と言われます。登記...

共有持分の買取

次に、他の共有者の持ち分を買い取り、自身の単独所有の不動産にする方法です。または、自身の持ち分を他の共有者へ売却して共有不動産から手離れする方法でも同様です。

効果

  • 購入側:単独で活用が可能
  • 売却側:不動産保有の負担から解放

注意点

  • 購入側が資金調達可能なことが前提
  • 共有者との価格交渉が必要
  • 取引価格の適正性に裏付けが必要

この方法では取引価格について適正価格と著しく乖離していないか、またその裏付けがあるかがポイントとなります。

特に共有者が親族間である場合(殆どの場合が親族間だと思いますが)、恣意的に低廉または高額な価格を設定していない等、税務署も注視します。当然に市場価格と過度な乖離がある場合には、贈与とみなされ、過大な贈与税が課せられる可能性もあります。

売り手と買い手が既に決まっている取引に、仲介手数料を払って不動産屋に依頼するのは嫌かもしれませんが、適正価格のアドバイスを受け、不動産屋に売買契約書を作成させることで、個人間で恣意的に価格設定をしているのでなく、プロの助言の基に売買したという口実になるでしょう。

また、同様に費用はかかりますが、税理士へ価格についてのアドバイスを求めるのも良いでしょう。(その税理士も市場相場は分からないので結局は不動産屋へ相談をするのですが、、、)

共同売却

最後に、共有者と協力して不動産を売却し、現金化して分配する方法です。不動産売買の実務でもこの方法を選択されるお客さんが最も多いです。

効果

  • 金銭に換価するため分割が容易
  • 不動産保有に係る負担から完全に解放される

注意点

  • 各共有者の課税関係について事前確認が必要
  • 反復継続しての売却は業法違反となる可能性あり

最大のメリットは共有不動産からも共有者からも完全に解放される点でしょう。また、最終的に金銭で分割するため、共有者との交渉等も必要なくトラブルの心配が少ないです。

注意点の1点目は、事前に各人の課税関係を確認しておくことです。たとえ同じ不動産を同じ条件で売却したとしても、不動産売却に係る税金はその人によって違うからです。

居住していた人が売却する場合は自宅扱いなので減税措置がありますし、相続に絡んで売却する場合には小規模宅地の特例の適用の可否により、税額が大きく異なります。

税理士や税務署へ確認のうえ、事前に課税関係を把握してから売却に臨むのが間違いないでしょう。

2点目は売却方法についてです。共有の不動産で面積が大きい場合、住宅需要の個人が買いやすい大きさの土地に分割して売却する方法も考えられますが、そのような売却方法をするには宅建業の免許が必要となります。免許のない個人が反復継続して土地の売却を繰り返すと、”業”としてみなされて宅建業法違反として処分さる場合がありますので注意してください。

土地面積の大きさが障害となるようであれば「入札方式」による売却方法もあります。下記の記事も参考にしてみてください。

売主必見!入札方式による不動産売却の成功のカギ 皆さんこんにちは ミナンチャ(@minanncha)です! 不動産を売却する方法のひとつで「入札」というのを耳にしたことは...
不動産を相続した場合に押さえておきたい売却・有効活用の注意点と税金のこと 今回は不動産を相続した際の注意点について分かりやすく解説していきます。 相続は突然やってきます。いざというときに困らないように最...

最後に:お勧めの解決策

共有者同士で同意が得られるならば、共同売却することをおすすめします。

共有物分割も持分買取も、土地面積規模であったり資金準備などの前提条件が必要となるうえ、共有者間での条件交渉が必要となります。

不動産で一番揉めるのは条件交渉のシチュエーションです。

不動産に思い入れがある場合もあるでしょう。しかし、先々のことまで考えれば、換金して金融資産で次の世代に残してあげる方が賢明であると僕は思うのです。

また、売却の際に依頼する不動産会社にあてがない場合は、まずは大手不動産会社へ相談してみるといいと思います。売却案件に関しては、大手の方が経験もノウハウも豊富だからです。

今回もここまで読んで下さりありがとうございました。

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