今回の記事では、不動産売却を検討されている方に向けて、売却の相談をする際に不動産会社に対して必ず伝えてほしいことを解説します。
これらのポイントを明確に伝えることで、不安を解消し、希望に沿ったスムースな売却を進めることができます。
端的に言えば、これらのポイントを確り伝えることで、不動産取引のトラブルを未然に防ぐことができ、相談者自身や相談した物件に最適な売却方法の提案を受けることができます。
本来であれば不動産会社の担当者から確認すべきポイントも含みますが、確認が抜けているようであれば、それらをしっかりと潰しこみすることで、売主さんと担当者との間の不明瞭な領域がクリアになり、納得して売却活動を依頼することができます。
僕の長い不動産営業の経験から、不動産会社の目線で実務に即した解説をしていきます。
最後まで読んで頂ければ、あなたの不動産売却はきっと上手くいくでしょう。
結論:不動産会社へ伝えるべきこと
- 売却動機(なぜ・いつまでに売りたいか)
- 他社への依頼状況
- 会社案内のパンフレットを貰う
- 意見を求める必要がある関係者の有無
- 物件の欠陥・不備・トラブル
- 増改築の内容
- 物件の関係書類は全て確認してもらう
- 売却希望価格(高くてもOK)
- 提案された販売方法のメリット・デメリット
- 売却の全体スケジュールを教えてもらう
- 諸経費・税金・手取り予想額を教えてもらう
- 最後に:どの不動産会社が良いのか
この記事の信頼性
この記事はこんな人が書いています。
- 大手不動産会社で長年にわたり売買仲介を経験
- 宅地建物取引士
- 1級ファイナンシャルプランナー
- CFP認定者
売却動機(なぜ・いつまでに売りたいか)
世の中の不動産は様々な理由で売りに出されます。例えば、相続税納税のため、債務返済のため、住み替え、共有名義解消、不要資産の処分、結婚、離婚など多岐にわたります。
不動産売却を成功させる上で最も大事なことは、「なぜ」「いつまでに」売却したいのか、売主さんの売却動機を不動産仲介会社の担当者へしっかりと伝えることです。
なぜなら、その事情ひとつひとつに最適な売却方法が存在するからです。
相続税の納税のためであれば、特定の期日(相続発生から10か月以内)までに現金化して納税する必要があるし、住み替えや不要資産の処分であれば、時間をかけて売却する方法をとることもできます。
不動産仲介会社は、これらの売主さんの売却動機を確認したうえで、適正価格を設定して個人向けに販売をスタートするのか、または、入札などでプロの不動産買取会社に買値を競わせて好条件を引き出すのか、最適な売却方法を提案してくれます。
他社への依頼状況
大事な資産を売却する時に、様々な会社の意見を聞きたい考えるは当然です。
不動産仲介会社も、相談にこられる売主さんが、自社にのみ相談や依頼をしているとは思っていません。
売主さんによっては、気が引けるのか、他の会社へも相談している事実を隠される方がいます。しかし、それは間違いです。
まず前提として、売主さんが複数社へ相談していれば、売却活動をスタートした後、不動産仲介会社には、不動産仲介業者の共通ネットワークシステム(通称「レインズ」)へ登録、不動産業者間での情報交換、現地での他社の動向などで、複数社へ相談している事実は直ぐに分かります。
複数社に相談するのは当たり前です。不動産仲介会社へ売却相談をされる際には、最初からどの会社へいつから依頼して、販売の状況がどうなのか、しっかり伝えてください。
他社で活動して結果がでなかった方法をなぞっても時間の無駄になります。
不動産仲介会社も特徴は様々です。他社にないノウハウや販路を持っていたり、他社の販売では試していない方法があり、今までの他社の活動と結果を踏まえて、もっと有効な販売方法の提案をしてもらえる場合があります。
会社案内のパンフレットを貰う
売却相談で不動産仲介会社との面談した際には、名刺だけでなく会社案内のパンレットも必ずもらうようにして下さい。
「当社は創業何年で・・、業界大手の〇〇社と業務提携しており・・・」とセールス文句を言いますが、正直、信ぴょう性はありません。
会社案内のパンフレットには嘘は書けません。
また、なぜ会社のホームページでなく、会社パンフレットを確認する必要があるのか。
それは会社パンフレットのクオリティから、お客様にどう見られるのかというプロ意識の高さが分かります。当然にこれらは買主さんへも会社説明時に使用されるものであり、高額な不動産を購入する顧客に対して与える安心感も違ってきます。
些細なことですが、不動産仲介会社の質を見るのには有効です。
意見を求める必要がある関係者の有無
不動産売却にかかる判断をする時にご自身の単独判断で全てジャッチできるのであれば問題ありませんが、親族や顧問税理士などで、意見を聞かなくてはいけない人物がいればしっかり伝えましょう。
担当者からしてみても、取引成立の直前でご意見番から商談を壊されても堪りませんから、手続きのあらゆる場面で、そのご意見番に気遣いをして、慎重に意見調整をしながら取引を進めてくれます。
また、ご意見番があなたの希望に沿わない主張をすることもあります。その際にも、担当者が取引の序盤からご意見番と接触をしており、性格や人となりを分かっていれば、あなたの味方となって上手く立ち回ってくれます。
一番最悪なのは、売主さんと担当者とで話を進めていて、ようやく商談がまとまりそうな段階で、ご意見番が登場して、話を全てをぶち壊すというケースです。信じがたいことですが、不動産取引の実務の中ではよくあることです。
これは、売主さんだけでなく、買主さんにとっても不幸なことです。
物件の欠陥・不備・トラブル
物件の悪い側面は隠してはいけません。取引上、取り返しのつかないトラブルに発展する可能性があります。
隠すのではなく、不動産仲介会社へ売却相談をする入口の段階で、物件の瑕疵(致命的な欠陥)・不備・トラブルは担当者へ伝えるようにしてください。
役所調査や登記情報調査、現地確認から分かる物件の瑕疵であれば、不動産のプロは気づきますが、中には売主さんしか知りえない情報である場合があります。
例えば、事件や事故・近隣トラブル・建物の設備機器の故障や不具合などです。
これは買主の購入心理に大きく影響することであり、知っていて黙って売却した場合には、買主から損害賠償請求されます。(売主が知らなかった場合でも、売主に補修の責任が発生します)
最初から正直に告知することで、販売活動の初動で適切な買主候補に向けた販売戦略を立てて、販売時間を無駄にすることなく、その事実を承知して購入する買主を探すことができます。
売買契約書に瑕疵について買主が容認して買う旨の特約条項を付して不動産売買契約を締結しますので、トラブルになることはありません。
増改築の内容
駐車場を壁と屋根で覆った、ベランダをサンルームに改造した、屋根裏部屋を居室に変えた、どれも容積率超過で違反建築となる恐れがあります。
違反建築であった場合は、行政から是正命令を受けたり、金融機関で融資の審査が通らない等の障害が発生ます。
現況の建物の確認や課税床面積と登記情報との比較などで発見できることが多いですが、一見して分からないような増改築だと、担当者も見落としてしまう場合があります。
これも前述の瑕疵・欠陥等と同様に売買契約をした後に発覚した場合には、買主と大きなトラブルになります。
違反建築の状態にあっても、内容によっては、土地家屋調査士に床面積を測量してもらい、更正登記をかけて遵法性を証明したり、工事によって是正するなどの対策ができる場合があります。
最初の段階で担当者に伝えることで、是正策を講じてから売却活動を開始するなどの提案も受けれるかもしれません。
物件の関係書類は全て確認してもらう
物件の関係書類とは、具体的に、測量図・境界確認書・覚書・私道通行掘削承諾書・賃貸借契約書(借地契約書)・サブリース契約書・管理委託契約書等です。
これらの書類があれば、全て不動産仲介会社に確認してもらうようにしましょう。
素人ではなかなか読み解けませんが、不動産売買の取引上、注意が必要な内容が記載されている場合があるからです。
よくトラブルになるケースで言えば、サブリース契約(賃貸物件を不動産会社が借り上げ、第三者へ又貸しする契約)について、建物を売主から買主に所有権移転した後、当該契約が解約できない状態になっている場合、物件の価値を既存するような内容の覚書を結んでいる場合、などがあります。
これらの内容も事前に分かっていれば、そのトラブルの種を刈り取ったり、担当者が関係各所へ交渉をして是正する合意を取り付けたりといった対策をとることができます。そもそも、そうであれば売却するのは取りやめるという選択肢もあるでしょう。
また、測量図や境界確認書については、相当古いものや隣地が代替わりしている等でなければ、今もまだ売買に有効に利用できる場合があります。
一般的に測量費用は高額です。しかし、事前に過去の測量関係資料の有効性が確認できれば、その費用をかけずに済むかもしれません。
たかが書類一枚。しかし、その書類一枚の存在で物件の売買価格に何百万もの影響を与える場合があります。
売却希望価格(高くてもOK)
不動産会社からの査定価格の提案を受けたうえで、売主さんの希望売却価格があれば、遠慮なく伝えましょう。その金額が高くても気にすることはありません。
不動産の査定価格というものは、車や宝石の買取金額の査定と違い、成約価格を保証するものでなく、その時のマーケットから成約が見込める価格の「予想」をお示しするものです。
従って、複数社へ依頼すると査定価格にばらつきが出ますし、一般的には3か月以内を目途に売買が成立する現実的な価格を示す性質から、売主さんの予想よりも低い価格になりがちです。
不動産売却はたった一人の買主を探す活動です。
極論、99人が興味を示さなくても、1人が気に入って買ってくれればいいわけです。
もちろん、相場を逸脱した高値は論外です。不動産仲介会社もはっきりと断るでしょう。しかし、相場の可能性の範囲内であれば、高値からスタートしてみるべきです。
「相場の説明は理解したが、〇〇万から試してみたい」と伝えて下さい。
ただし、実際に希望価格で販売してみてマーケットの反応が全くないのにも関わらず、意固地に高値をひっぱるのは止めてください。売れ残りの物件イメージが付いたり、他の類似物件のセールスに利用されるだけで、一番良くない売り方です。
良く担当者の話しを聞いて、適時、適正相場に合った価格へ見直しすることを忘れないでください。
提案された販売方法のメリット・デメリット
売却方法も様々です。一例ですが、エンドユーザー向けの一般的な販売、非公開売却、一般入札方式、限定入札方式、バルク販売(複数物件の場合)、不動産M&A方式(法人名義の場合で株式を譲渡する方法)などがあります。
例えば、入札方式であっても、制限なく多くの先から入札を募る方法(一般入札方式)と特定の候補先に絞って価格を競わせる方式(限定入札方式)があります。
一見すると一般入札方式の方が分母が多いので高値が目指せそうですが、実はそうではありません。デメリットとして、入札者からすると競合が多すぎることが高値掴みの懸念やそもそも応札するだけ無駄という心理から、参加自体を見送ったり、入札窓口となった不動産仲介会社との付き合いから顔を立てるために、落札する気の無い低い価格で形式的に応札したりするなどして、結果的に本来の物件価値に見合った高値を引き出せないという点があります。
一方、限定入札方式の方が、頑張って高値を提示すれば、落札できるという心理が働き、良い競争が生まれ、価格の極大化が図れます。
一般入札方式は、マンションデベロッパーが買うような都心部の広大な土地等の場合であれば、そもそも、応札できる資金力がある先も限られるため、事実上の競争が生まれ、価格上昇が期待できることから、適していると言えるでしょう。
また、エンドユーザー向けに売却する場合と不動産買取業者へ売却する場合とでも、メリット・デメリットが存在します。
このように、その売却案件に最適な売却方法があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。それらを良く理解し、自身の売却動機と照らし合わせて、どれに優先順位を置くのかを考えることが大切です。
売却の全体スケジュールを教えてもらう
不動産取引は案件内容によって取引完了までの期間、やらなくてはいけない作業が異なります。
測量や解体、賃借人立ち退き、私道通行掘削承諾書の取得、農地転用、抵当権抹消準備等さまざまな履行義務が取引関係者に発生します。
これらの履行義務について、取引関係者のスケジュール調整を行い、全体を上手くコントロールするディレクター的な役割を担うのが不動産仲介会社です。
当然、売主さんの必要作業についても、不動産仲介会社がアテンドしてくれるのですが、期日までに行わなくてはいけない書類の提出や、金融機関への連絡などの必要作業について、作業を失念したりしてしまうと取引関係者に多大な迷惑がかかってしまいます。
全体のスケジュールの中で自分がいつまでに何をしなくてはいけないのかをしっかり確認するようにしましょう。
また、売却資金の全てを受領できるのは、これらの履行義務が全て完了した後の決済時です。納税やその他支払いが絡む場合は、決済可能な時期もしっかり確認しましょう。
諸経費・税金・手取り予想額を教えてもらう
不動産売却には仲介手数料や抵当権抹消費用、測量費用、解体費用、引越し費用など、様々な費用がかかります。
合わせて、買った時の金額よりも高い値段で売れた場合には、儲けとみなされる部分に対して税金がかかります。税金には所有していた期間や居住用か否か、その他個別事情によって様々な控除や課税方法があります。
予想していた金額よりも大幅に手取り価格が少なく、計画が狂ってしまったというようなことが無いように、最終的にいくら手元に残るのか、そこからさらに翌年いくら納税する必要があるのか、しっかり確認するようにしましょう。
最後に:どの不動産会社が良いのか
ここまで、不動産売却の相談時に不動産会社に対して、何を伝えればよいのかを解説してきました。
ただ、これらの解説してきた事項について、できる限り不動産会社がリードして、抜け目なくフォローして欲しいところですよね。安心して任せられる不動産会社へお願いしたいと思うのは当然です。
僕は不動産売却についての不動産会社選びは、大手が担当者のレベルの高さも提案力も絶対的に優位だと思っています。理由は下記のとおり。
- 社員の教育水準が高く、当たり外れが少ない
- 売主が大手を選ぶ傾向から、売却案件取り扱いの経験値が豊富
- 売り物件を多く持っているので、反響による買主顧客を沢山抱えている
- 様々な案件の成約実績があり、高難易度の案件にも対応できる
- ブランド力が買主へも安心感を与える
具体的な大手不動産仲介会社といえば、下記の業界TOP5です。
- 三井のリハウス
- 東急リバブル
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僕の長い業界経験から、その中で最もオススメできるのは、業界売上NO1で絶対王者である「三井のリハウス」です。
僕自身も何度も共同仲介取引をしましたが、総じて高水準のサービスを提供する印象があります。
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今回の記事が不動産売却に悩まれる方のお役に立てば幸いです。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。