今回の記事では不動産会社がどのようにして物件情報を収集しているのかについて解説します。不動産業者のみが利用できる物件情報共有サイト、いわゆるレインズ以外にも沢山の情報網と収集方法をもっています。
今回の記事を読めば、不動産会社の物件情報の収集方法を知ることができ、どこの不動産会社に相談すれば優良な情報が得やすいのかが分かるようになります。
情報収集方法の一部については一般個人の方にも実践可能なものもありますよ。
それでは行ってみましょう!
この記事で分かること
この記事の信頼性
この記事はこんな人が書いています。
- 財閥系不動産仲介会社で17年間に亘って仲介業務を経験
- 現在まで300組以上の売買仲介案件を成約
- 宅地建物取引士
- 1級ファイナンシャルプランナー
- CFP認定者
不動産屋の物件情報の入手方法
不動産会社が物件情報を入手する方法について一つずつ解説していきます。一般の方にも分かりやすいように専門用語は極力避け、分かりやすく記載します。
レインズ
まずはこれですね。不動産屋の情報ネットワークといえば東日本不動産流通機構の運営する不動産情報共有サイト。いわゆる「レインズ」です。
レインズとは不動産会社のみが登録・閲覧できる物件情報共有のためのインターネットサイトです。不動産会社が売主から独占的に物件の販売活動の依頼(専任媒介といいます)を受けた場合には、7営業日以内にレインズに物件情報を登録して、不動産業者間で情報を公開しないといけない法律になっています
賃貸物件・売買物件ともに登録されており、マンション・戸建・店舗・収益物件などほぼすべてのジャンルの不動産情報がカバーされています。
買主から物件探しの相談を受けると、まずはこのレインズで物件を検索する不動産屋が多いでしょう。
- 不動産会社の間で物件情報を共有するサイト
- 不動産会社は専任媒介で受けた物件を登録する義務がある
- 一般の人は見ることができない
銀行
銀行や信託銀行は不動産情報の宝庫です。
特にメガバンクでは総資産営業を展開しており、融資や金融商品の販売のみならず、不動産活用による資産運用や相続に関するサポートなど不動産に関連する業務を多数扱っています。
地主の相続案件や収益物件の買い替えなど大型の不動産や富裕層向けビジネスに関する案件が多いのが特徴です。
ただし、その情報を開放する窓口は限定的でそれぞれの金融グループの不動産会社が独占しています。
- 金融グループの不動産会社が情報を独占している
- 富裕層向けや大型の案件が多い
再販物件
再販案件とは、不動産仲介会社が売却依頼を受けた物件を一旦、不動産買取業者へ買ってもらい、その不動産買取業者が建売を新築したり、リフォームをした後に転売する際、その販売を当該不動産仲介会社が請け負って販売することを言います。
不動産買取業者からすれば、仕入れに貢献してくれた不動産仲介会社に対して、見返りとして転売物件の専売特権をお返しする意味合いがあります。
販売の依頼を受けた不動産仲介会社は自らで買主を見つけて売主と買主の双方から仲介手数料を得るために、わざと物件情報を秘匿して非公開の状態で自社の抱える顧客へ販売するケースが多いです。なお、ここで言う非公開とは不動産仲介業者間のことを指し、自社のインターネットサイトや折込チラシには広告掲載されることが殆どです。
- 不動産業者が売主の物件
- 新築物件・リノベーション物件等が多い
- 不動産業者間で非公開にて販売するケースが多い
買取業者
不動産仲介会社と不動産買取業者(建売業者など)は密接な関係にあります。不動産業界では横のつながりが非常に強く、不動産情報を緊密な不動産業者間でやり取りしています。
もちろん買取業者には物件を買い取ってもらう取引がメインとなりますが、逆に買取業者から自社物件の販売協力を要請されることもよくあります。
ただし、これらの物件については大抵の場合、先に述べた再販物件として一定期間販売したものの、売れ残ってしまった物件が多いです。再販を委託していた不動産仲介会社では売り切ることができなかったため、大幅な値下げに踏み切る前に付き合いのある他の不動産仲介会社に直接持ち込みをして客付けを要請するのです。
- 非公開物件だが売れ残りが多い
- 特定の不動産会社しか情報が回ってこない
旧客・紹介
過去に取引したお客さんからリピート取引の依頼を受ける場合があります。
また、同様にして、知人や親族などが不動産売買を検討しており、良い不動産屋はないかと相談されて、過去に自分が利用した不動産会社を紹介する場合があります。
当然にお客さんは当時世話になった担当者に信頼を寄せているため、次の取引でも手伝ってほしいと思ったり、知人へ紹介したりするわけで、得てして優秀な営業担当者である場合が多いです。
法人よりは個人のお客さんからのリピート依頼が多いため、住宅案件の方が多い印象があります。
- 顧客事情により舞い込んでくる案件でタイミングは読めない
- 物件を担当する営業マンが優秀である場合が多い
ハウスメーカー
不動産屋や建築業界とも繋がりが深く、お互いにお客さんを紹介する立場にあります。
具体的には、建てたい理想の家は決まっていてるが肝心の土地がまだ見つかっていない場合に、当該顧客を抱えるハウスメーカーがその土地探しを不動産仲介会社へ依頼するケースであったり、逆に不動産仲介会社が土地を仲介して買ってもらったお客さんから良いハウスメーカーがあれば紹介してほしい等の相談を受けるケースです。
一般的には土地の購入相談がメインとなりますが、中には買い替えが絡む案件で、新築に入居した後に旧宅を売却する場合などもあり、販売を依頼されることが少なくありません。
- 不動産営業マンと住宅メーカー担当者との属人的な情報網による
- 住み替えに伴う中古住宅の物件が多い
士族
主に弁護士や税理士、司法書士などからの情報です。
弁護士は離婚案件や後見人としての財産処分、管財案件などを取り扱うことが多く、不動産情報を抱えています。税理士も相続税圧縮にかかる提案や税制上のメリットを考慮した個人・法人間の不動産売買の提案などによる不動産ニーズがあります。
案件の特性上、売却期日が決まっていたり、買主に不利な条件を了承して買ってもらうことが多いため、不動産買取業者向けの販売になりがちです。
各社ともこれら士族あてに熱心にDMを送っており、不動産情報の獲得に躍起ですが、査定書が欲しいだけで売る気は全くなく、利用されるだけということも多々あり、不動産屋からするとスカの案件が多いのが苦しいところです。
- 相続や税制に絡んだ難易度の高い案件が多い
- 不動産買取業者向けの販売が多い
業務提携先企業
大手不動産会社の場合、上場企業と業務提携していることがあります。提携先企業の社員が不動産を売ったり買ったりする場合に、仲介手数料の割引が受けられるものです。
一般の人にとって仲介手数料は大きな出費です。10%でも20%でも割引となれば、家具や車が買えるくらいの効果があります。
不動産仲介会社からしても、大手企業勤務の高年収サラリーマンであれば銀行融資の審査も通りやすく高額の物件購入してくれたり、富裕層一族であったりして、所有物件の売却も高額であることが多いためうま味があるのです。
- 大手不動産会社での取り扱いが多い
- 売主の属性がよく物件も高級路線のことが多い
ネット査定
昨今は一括査定が多く、大手不動産会社をはじめとして競合が激しいのが実態です。
不動産屋の本音を言えば、一括査定は査定価格の把握のみが目的の実利のない案件が多いにも関わらず、競合に晒されるため、面倒と言わざるを得ません。
一括査定の依頼を受けた不動産会社も委任を受けたいがために故意に相場よりも高い査定価格を提示することに加え、売主も不動産会社から沢山の営業を受けることで高く売れる物件だと勘違いするため、物件の販売価格が高額となる傾向があります。
また、売主も真剣に不動産会社選びをしないため、複数の会社へ売却活動の依頼(一般媒介といいます)をすることが多いです。
- 相場より高い価格設定の物件が多い
- 複数の不動産会社が取り扱うことが多い
空地・空家
古くからある手法ですが、街中を歩いて空地や人が住んでなさそうな空家を見つけて、ポスティング広告をしたり、法務局で所有者を調べてDMを送ったりします。
どの物件が売り物になりそうか見極める不動産屋の目利きが必要です。ある意味で不動産屋の勘がものいう手法と言えます。
運よく反響があれば、物件化に向けてセールスします。
インターネット主流の今だからこそ、アナログな方法は競合が少ないという利点もあります。
- 人の足で稼ぐアナログ手法
- 売り物になりそうか不動産屋の目利きが大事
DM
空地や空家以外にも様々な種類のDMがあります。
- 老朽化した収益物件向けDM
- 相続登記があった先へのDM
- 紹介客への割引キャンペーンDM
- 競売案件への任意売却誘引DM
- 購入から5年後(税制緩和)DM
などなど、枚挙に尽きません。各社とも日々新しいアイディアに知恵を絞っています。
いずれにしても名の知れない不動産会社よりは大手が安心できるという心理が働く点や、様々なDM送付先の顧客情報の購入に潤沢な資金を振り向けられるという点で大手不動産会社が売却依頼を獲得することが多い傾向にあります。
- 安心感や資金力から大手不動産会社の情報獲得が多い
- DMのアイディアは各社の腕の見せ所
どこの不動産屋に相談すればよいか
これまで不動産会社の物件情報の収集方法について解説してきました。では私たち顧客側は数多ある不動産会社の中からどこを選べば有力な物件情報を得られるのでしょうか?
そんな不動産会社選びついてもお話しします。
希望エリアにある不動産会社が鉄則
不動産会社は今も昔も地域に根差してこそです。不動産業者間の情報網や物件エリアの相場感などその地域にある不動産屋しか持っていない知識や人脈があります。
その物件の情報はそのエリアの不動産屋にしか入ってこない場合が殆どなのです。
支店がいくつもある会社であっても、購入を希望する地域の支店を選ぶべきです。
やはり大手不動産会社が強い
小さい不動産屋にも地域の繋がりから得られる不動産情報であったり、代々の付き合いがある地主の相続情報など特有の情報源を持っているのは確かです。
しかし、人材、情報ネットワーク、売り手側の信頼度などを総合的に鑑みるとやはり大手不動産会社には勝てないのが事実です。
相談先に迷うのであれば
- 三井不動産リアルティ(三井のリハウス)
- 東急リバブル
- 住友不動産販売
など、まずは大手不動産会社に相談してみるのが吉でしょう。
ただし、注意頂きたいのは大手不動産会社であればどの担当者でも良いという訳ではありません。どの会社にも優秀な営業マンもいればそうでない者もいます。信頼できないと思う担当者にあたってしまった場合は、不動産会社へ理由をはっきり伝えて、信頼できる担当者へ変更してもらうことも検討しましょう。
銀行系不動産会社が面白い
もしも探している物件が高級住宅であったり、銀行融資に向く綺麗な物件、あるいはなかなか市場にでないようなレアな物件である場合には、銀行系不動産会社が有力な選択肢になると思います。
先の解説でも触れたように、銀行は様々な資産営業を行っており、それらから派生する貴重な不動産情報は系列の銀行系不動産会社が専属的に取り扱いをしています。
- 相続税納税
- 債務返済
- 富裕層の資産組み換え
- 法人の益出し損出しに係る売買
- 借地底地の整理
などなど、普通の不動産会社ではなかなか取り扱わない難易度の高い案件を持っています。
押さえておきたいメジャーな銀行系不動産会社は下記のとおりです。
- 三菱UFJ不動産販売
- みずほ不動産販売
- 三井住友トラスト不動産
特に三菱系はメガバンクの中でも随一の情報量と質を誇ります。
まとめ
不動産会社が物件情報を入手する方法について一つずつ解説してきました。レインズ以外にも、銀行や再販物件など沢山の情報網と収集方法を持っていることが分かったと思います。
不動産屋の手法を知ることで物件情報の源泉がどこにあり、そこから出てくる物件の傾向や特徴が何であるのかが分かるようになります。これはあなたが物件探しや不動産会社選びをするうえできっと役立つ知識となるはずです。
以上、今回の記事がご参考になれば幸いです。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました!