皆さんこんにちは
ミナンチャ(@minanncha)です
世の中には私道に面してる不動産は沢山あります。私道はトラブルの元とも聞きますが本当に買っても大丈夫なんでしょうか?高い買い物である不動産、不安はなるべく取り除いておきたいところですよね。
私道のリスクとは何か。これをしっかりと押さえておけば恐れることはありません。
私道の何が問題で、解決するために何を確認して、どのようにすれば良いのか。また、私道に関する通行掘削承諾とは何なのか。
この記事を読めば、私道の物件を不安なく買うことができるようになります。
これから土地・戸建・一棟収益物件を買おうとしている人は是非最後まで読んで下さい。
それでは行ってみましょう!
この記事で分かること
この記事の信頼性
この記事はこんな人が書いています。
- 業界大手の財閥系不動産仲介会社で17年間に亘って仲介業務を経験
- 現在まで300組以上の売買仲介案件を成約
- 宅地建物取引士
- 1級ファイナンシャルプランナー
- CFP認定者
私道の何が問題なのか
当たり前ですが”私道は他人の土地”です。自分の家の目の前の道路が他人の土地である場合、どんな不都合が生じるでしょうか。
通行・掘削には所有者の許可が必要
例えば「私の土地を勝手に通行しないでください」と突然言われたらどうでしょう。困りますよね。
道路(私道)といえど他人の土地を通行したり、水道や下水道を引き込みするために掘削したりするのには、所有者の承諾が必要です。
建築ができないことも
私道の所有者の承諾がなければ、当然に建築工事のための工事車両も通行できません。そうなると建築工事をすることができないのです。
私道に面した土地に建築をする場合には、ハウスメーカーからも事前に車両通行や上下水道引き込みのための掘削についての承諾を私道所有者から取得するように求められます。
通行掘削承諾書を取得してもらう
従って私道に面する土地を購入する場合、売主に引き渡しまでに私道所有者から通行や掘削に関する承諾を書面で取得してもらい、買主へ交付してもらうことが必要となります。
通行掘削承諾書とは何か
通常、私道に関する通行や掘削の承諾は口頭でなく書面で取得することが一般的で、この書面を「通行掘削承諾書」などと呼びます。
通行掘削承諾書には下記の承諾内容を記載し、私道所有者から承諾の署名押印を貰います。
通行掘削承諾書
●●殿
私は下記所在地に所有する私道について、貴殿に対し下記内容を無償にて承諾します。
- 本物件におけるガス管、上下水道埋設および引き込みのための掘削ならびに付随工事の件
- 本件における無償通行(工事車両含む)および無償使用の件
- 私から譲渡を受ける第三者に対する上記①②の事項の承継
- 貴殿が本物件を第三者に譲渡される場合、当該第三者に対して本承諾書の内容を承継させる件
●区●町1丁目2番3号
ミナンチャ太郎 ㊞
通行掘削承諾の取得の特約を付ける
先に説明のとおり、私道に面する物件を購入する際には通行掘削承諾書の取得が必須となります。
したがって、売主に対して、引き渡しまでに通行掘削承諾を取得して買主へ交付することを物件購入の条件とし、売買契約書へ下記のような特約を規定するように交渉する必要があります。
第●条(通行掘削承諾の取得)
売主は本物件の引き渡しの時までに、本物件●側接面私道(地番:●●)の所有者より、当該私道における通行・掘削を承諾する旨の承諾書を取得し、買主へ交付するものとする。
公道に抜けるまでの所有者全員分を取得
通行掘削承諾書を取得する必要のある対象の私道区域は「近くの公道へ抜けるまで」です。すなわち、公道に出るまでに踏んづけて行かなければいけない全ての私道となります。
なぜなら、一部の私道のみ通行掘削承諾書を取得しても、地続きの他の私道所有者から通行・掘削を拒絶された場合、結局はその私道部分が障害となって公道から自分の家まで辿り着くことができないからです。
私道の物件を買う前に確認すべき事項
私道に面した物件を買う際に”これだけは確認しておくべき”というポイントをお伝えします。
公図で私道の形状と所有者を確認
まずは不動産屋に頼んで物件の公図と私道部分の謄本を見せてもらいましょう。例えば下記のような場合、物件(地番1014-4:赤枠部分)から公道(「道」と表記されている部分)に抜けるまでには、地番:1014-1、1014-2、1014-9、1014-12、1014-13の私道を通らなくてはいけません。
続いて謄本や登記事項要約書などでそれらの私道の所有者が誰で何人いるのか確認します。
売主の通行掘削承諾書の所有の有無と内容
売主が購入時に既に私道所有者から通行掘削承諾書を取得していて、保有していることがあり、その場合は書面の取得の手間が省けます。
しかし、内容はしっかり確認する必要があります。中には、随分昔に取得した通行掘削承諾書であって、私道所有者が代替わりしていたり、譲渡によって所有者変更している場合あります。
先にお示しした通行掘削承諾書のサンプルに記載のとおり、第三者へ譲渡した際には通行掘削承諾の内容を当該第三者へ承継させる文言が入っていますが、これで承諾内容が完全に担保されるわけではありません(後述)。
売主が保有する通行掘削承諾書の承諾者と現状の私道所有者とが相違ないかを確認する必要があります。
私道の物件を買う際の注意点
第三者へ譲渡した際の承継文言は完璧ではない
先に述べたとおり、通行掘削承諾書には自ら譲渡した場合と私道所有者がその私道を譲渡した場合のいずれの場合にも通行掘削承諾書に記載する取り決めを承継する文言を付すのが一般的です。
しかし、第三者への承継文言を記載しているからといって法律的に取り決め内容が完全に担保されるわけではありません。
AさんとBさんが取り交わした約束について、第三者であるCさんに当該約束の遵守を強制できるものではないからです。Cさんから「その約束はAさんとBさんの約束であって、私には守る義務はありません」と言われればそれまでだからです。
また、そもそも通行掘削承諾書がしっかりと承継されていない場合も多々あります。譲渡して手放す立場となった人は、そんな承諾書のことなんかどうでもいいですからね。
可能なら通行掘削承諾書は買主名義で取得してもらう
上記のことを踏まえ、売主が応諾してくれるのであれば、買主の名義で私道所有者との通行掘削承諾書を取り交わししてもらうことが望ましいでしょう。書面上では当事者同士の合意になるからですね。
”売主が応諾してくれれば”と記載しましたが、これには理由があります。
売主からしてみると、買主との売買契約締結後に買主の名義で私道所有者と通行掘削承諾書の取り交わしをしたにもかかわらず、ローン解除やその他の解除条件の不成就により、不動産売買契約が解除となった場合、取得したその通行掘削承諾書は無駄になってしまうからです。
解約リスクの低い条件で売買契約を締結するなど、売主と事前にスケジュールや売買条件のすり合わせをしておく必要があるでしょう。
自分が売却する時も同じ作業が必要
終の棲家とか、永久保有物件とか思っていても、人生は何があるか分かりません。将来、あなたが売主となって、その物件を売却する状況が来るかもしれません。
その時に忘れてはならないのは、あなたが売却するときも同じように通行掘削承諾書の取得などの負担が生じる可能性があることです。
私道所有者側が相続によって名義変更になっていたり、或いは、買主より買主名義での通行掘削承諾取得を購入条件として要請されたりした場合などは、自身がその物件を購入した時の売主と同様に新たに通行掘削承諾書を取得する負担が生じるということです。
不動産はいつかは必ず売る時がきます。それはあなたでなく、あなたの子供や孫なのかもしれません。その時に同様の負担が生じる可能性があることを忘れてはいけません。
地権者が多すぎる場合、あきらめも必要
公図と私道部分の所有者を確認した際に、とんでもない数の私道所有者がいる場合は、現実的に通行掘削承諾書の取得が困難という場合もあります。
先に述べたように、何とか購入できたとしても、その先の将来で売主の立場になった時に、同じ苦しみを味わいます。
だから、私道に面する物件を購入する際には、事前にしっかりと私道の所有状況を確認して、将来、売却する際のリスクも想定しておく必要があるのです。
金銭を要求される場合もある
私道所有者の中には、こちら側が不動産の売買に通行掘削承諾書の取得が必要なことを逆手にとって金銭を請求してくる者もいたりします。
もちろん、無償で通行掘削承諾を貰えることが最も望ましいのですが、金銭を請求される方が”何があっても承諾しない人”よりはずっとマシです。
なぜなら、裏を返せばお金を払えば承諾をしてくれるということです。
忘れてはいけないのが、自分が売主の立場になったのなら、私道の通行掘削承諾に金銭を請求された場合であっても、「売り抜けること」を絶対的な主軸とすることです。
たとえ50万円支払っても、それで相場の5,000万円で物件が売れるのなら、別にいいんです。この考え方が大事です。
まとめ
解説したとおり、私道にはさまざまな注意点と負担があります。もちろん公道に面した物件を買う方が良いのは決まっています。しかし、条件が良くなれば物件の価格も上がるため、限られた予算の中でジレンマを抱えます。
お伝えしたいのは「知っていれば怖くない」ということです。
何も分からずに言われるがままに物件を買うのは良くありません。一方で私道が孕むリスクや対処法を知り、将来自らが売主になった場合のイメージを掴めていれば、購入することも何ら恐れることはありません。
私道に面している物件でも、その他の条件が良好であれば、迷わず選択肢に入れて下さい。
事前にこの記事でお話しした確認事項や注意点を分かった上で、それでもその物件が欲しいなら迷わず買うべきです。
あなたが、あたなだけの素晴らしい物件に巡り合えることを心より応援しています。
今回もここまで読んで下さり、ありがとうございました。